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2014年5月18日 (日)

石の街、檸檬の国 ~南イタリア旅行記 その1 ナポリ 悲劇。レンタカーについて~

P4300004_r朝、ホリデイインナポリの部屋の窓から見た風景。

P4300006_rヴィスヴィオ火山が遠く霞んでいる。

眠く、また怠い身体に鞭打って、とりあえず朝食をとりに行く。

さすがに大きなホテルだけのことはあって、メニューも豊富で、結構楽しい。

前日の無駄な食事と不規則な生活?から、お腹はあまり空いていなくて、それほど胃や腸の調子は良くないのだけれど、ついつい興味から食べてしまう。

ホテルから空港への送迎バスを待ち、これでナポリ カポディキーノ国際空港に戻る。

しかし、この旅でつくづく思ったのだけれど、イタリア人のおじさんが妙にかっこいい。この送迎バスの、そうただのホテルから空港への送迎バスのおじさんなのに、妙にダンディで、おしゃれで、気取っていて...う~む、そろそろ俺もこういう路線でいきたいものだ。ん?無理か??

そのかっこいいおじさんに荷物を降ろしてもらい、一旦空港に入り、レンタカーのオフィスを探す。探すが見つからない。日本の空港だと、レンタカー会社のカウンターが空港内にあったりするのだが、ない。

レンタカーこっち、という表示はあるのだが...Jに案内カウンタで聞いてもらうと、外にあるレンタカー用バス乗り場でバスに乗って移動するのだそうだ。

ちょうどバスがいたので、ちょっと待って!と意思表示したのだが、無視された。

冷たいなぁ。

すると間もなくバスがやってきて、今度は我々二人が乗っただけなのに、すぐに出発した。この人たち、せっかちなんだな、きっと。

BaggetとAVISが同じ系列とは知らなったが、複数のレンタカー会社が入った建屋で、同じカウンタで両社を取り扱っていた。

Img_3923_r

ここに行き、楽天レンタカーで予約したときのプリントを渡すと、「日本語で書いてあるから読めないわ?しょうがないわね、この子ったら。」的な指摘を受けているらしい。Jが教えてくれた。

英語もよくわからん。イタリア語はまったくわからん。という状態なので、こうして文章にしていても、実際相手がどういっているかなど分かるわけもなく、ニュアンスもろもろ...勝手に顔つきやしゃべり方から想像していること、あらかじめご容赦を。

しかし、楽天レンタカーの予約サイトでは、これを印刷して持っていけ、と書いてあるのだ。俺が悪いんじゃないぞ。楽天、恥かいたじゃないか。ちなみに、必要なところは英語も並記してあったので、僕的にはこれで十分だとも思ったりする。

こだわったのは、できればイタリア車に乗りたい、ということ。「こだわる」と「できれば」を続けるのは日本語的におかしいような気もするが、イタ車を希望してそれ以外の車が配車されても、それを交渉でどうこうしようとするつもりはない、という意味だ。

で、結局のところ、指定された駐車区画に停まっている車を探すと...なんだ、フォードかよ...アルファロメオ ジュリエッタ、または同クラスの車、というのが条件だったのだが、フォードC-MAXというフォードフォーカスのミニバン仕様だ。デカくて、鈍重そうだ。まぁこのフォーカスはヨーロッパ生まれのフォードらしいから、まぁいいのか。でもマツダ アクセラと同じプラットホームらしいが。

Jが、ジュリエッタに変えてもらえるように交渉しようか?と言ってくれていたが、すでに気後れ感満載の僕は、「いや、もういいよ」と小声で答える。

荷物をラゲッジに入れる。大きなスーツケースが普通に二つ横に並んで入って、なお余裕がある。ジュリエッタだと無理かも。

さて、エンジン。まずかからない。キーレスエントリーでスタートボタンを押すのだが、電源は入るが、エンジンはかからない。

ちなみにこの車、マニュアルミッションだ。ヨーロッパではAT車は少ないらしい。加えてディーゼルだ。同じくヨーロッパではディーゼルが主流らしい。

クラッチを踏んでスタートボタンを押すとかなんとか、適当にやっていたらようやく始動。

次に、GPSを借りていたので、こいつの様子をみる。どうにもイタリアには日本車のようにビルトインされたGPSはないのかな?ハンディタイプのGPSが貸し出された。こいつがないと、とてもイタリアをドライブなどできないので、これは命綱だ。日本語表示できる。

行先(後述)をセットし、シガーソケットに電源を差して..よし、出発だ。

リバースギアはシフトレバーを一番左にして、前に倒すといいようだ。

久しぶりのマニュアル車で、少々緊張する。ちなみに、僕が最初に車に乗ったのは(親の車とかは別として)、大学生のころ、バイト先のカローラバンを3万円で譲ってもらったのが最初。当然マニュアル。何しろもう23年くらい前だ。

その後、2馬力をいいことに、一気に車をグレードアップして、パジェロのショートボディ V6 3000 DOHC しかもマニュアル、というマニアックな仕様の車を買った。このパジェロを12年くらい乗っていたので、もともとマニュアル車自体に抵抗感はない。ただその後はずっとATなのでね。

で、バックで駐車スペースから出ようとしたら、なぜか車が前に行きたがる。

いやいや、後ろに行くんだよ、となだめすかして、なんどシフトレバーをリバースに入れても、前に行きたがる。

「誰か、呼ぼうか?」

「はい、お願いします...」前途多難だ。

パジェロは確か、リバースギアはオーバートップ(5速)の下側、つまり一番右の手前側だったように思うが、違ったかな?

おじさんが「やれやれ」という顔でやってきて、なんと、シフトレバーノブの下のカバーの部分の一番上端の金属リング(留め金的な)を上に引き上げながら、1速よりさらに左に倒して前に倒すと、リバースに入った。

・・・んなもん、知るか!

一応ね、レバー自体を引っ張るのかな?とか、その程度は試していたんだよ。カバーの上端をまさか引っ張らないといけないとは...

さて、とにかく、車は動いた。

このあたり、非常に緊張していたので、写真は一切ありません。あしからず。

とりあえず、この大型駐車場のようなレンタカーの敷地を出よう。

走り始めるとすぐにJが「右、怖い!」と訴える。

よくあることだ。なにせ、僕が左ハンドルの車に乗ったのは、それこそ25年ほど前、バイト先のちょっとやんちゃなお兄さんが中古のポルシェ911を持っていて、それを少し運転させてもらったことがあって、それ以来だ。

こういう状況は、事前にチェックしたブログ等の記載にもよく書かれていた。

「あ、ごめん。大丈夫大丈夫。」・・・ちっとも大丈夫ではない。

少し進むと、やっぱり右に寄っていく。

しかも、シフトレバーのストロークが大きくてシフトチェンジもし難いし、どうにもドロっとした感じで、どこに入っているかも分かりにくい。さらにさらに、余計なことにオーバートップの上に、6速がある。その癖に、というよりディーゼルの癖に低速のトルクが妙に弱くて、いや、馬力の割にこの車体が重すぎるのか、ローで発進しないとエンストしそうになる。絶対に自分では買いたくないような車だ。

ジュリエッタがよかったな~ と、まだここでは少しだけ、頭の片隅で思っていた。

そして駐車場を出る。

・・・悲劇はすぐにやってきた。

駐車場を出るとそこは道路だ。当たり前だけど。

つまりは道路を走らないといけない。超がつくほど舞い上がってしまっていた俺。

Jが危ないだ、怖いだ、と言っているのに、本人的にはまったく大丈夫なつもりで、ひきつった笑顔で車を進めていたら...

バキッ!

とても嫌な音がした。

道路脇はすべて路上駐車で、道路は実質車幅よりかなり狭い。

右ハンドル、左車線に慣れている僕らは、通常、自分の右側に中央線なりを見なが走っている。なので、中央線が自分の左側にあると、何か妙な錯覚にとらわれてしまって、中央線から一定の距離を置こうとするようだ。

結果、何が起こるか、というと、慣れない海外でのこういう悲劇だ。

血の気が引いた。

で、小心者の僕としては、当たったのはドアミラーで、相手の車もドアミラーのはずなので(音からして)、まぁ不運だと諦めよう(相手にも諦めてもらおう)、ほら、なんて言ったって、駐車するときに前後の車にバンパーを当てるらしい国なんだから、まぁいいだろう。

と、無視して進んだ。すると、後ろからクラクションが聞こえる。

なんと、間の悪いことに、その車には人が乗っていたようだ。

「止まった方がいいみたい。」とJ。

僕も、当然ながらこのヨチヨチとした運転で逃げれるわけもないし(逃げる気もないが)、道路脇の建物前が開けている(歩道への縁石が切れている)ところに停めることにした。が、停めようと車を寄せると、本人的には当たるはずがないのに、タイヤが縁石に乗り上げる。もう無茶苦茶だ。

車を停めると、後ろから問題の(いや、問題なのはこっちだが)車だ。

・・ああ、まじかよ...

よりによってベンツだ。日本なら、東京湾に沈められるか、中途半端に社会的地位が高いと自覚しているような人にネチネチといじめられそうな状況だ(すみません、冗談です)。

どんなことになるやら、と思いつつ、いざとなったら腹をくくるタイプの僕は(まぁ、ここまでの状況になると、どうしようもないけれど)、車を降りて、相手の比較的体格のいいイタリアのおじさんに、誠心誠意と見えるように努めながら「I'm sorry!」を連呼する。いや、それ以外にこの状況でどうこうと語る語学力がない。

ああ、不自由だ。

相手のおじさんも、まさか出てくるのが言葉もできない、ちょっとだけいかついという噂の顔をした日本人(というかアジア人)とは思わなかったのだろう。少々動揺している。

とにかく、何かひたすら訴えていて、その中には、お前の車は大丈夫か?的なことを言っているような気もする。いいおじさんなのか??

仕方なく、Jに通訳を頼む。というか、それは結局交渉してもらうことになるのだけれど。

Jは、某社の国際法務部門にいて、NY州弁護士の資格を持っている。帰国子女で、さらに留学経験もある。つまり英語はネイティブ並で、企業間のややこしいビジネス上の契約交渉で最前線に立っているという、極めてドメスティックな知財マンの僕とは次元の違う能力を持っている。

英語での交渉が続く。ベンツのドアミラーには、確かに少し黒い傷のようなものが見えるが、見様によっては大したこともなく、実際それ以外の傷もついていて、本人もあまり気にしていないようにも見える。

このイタリアのおじさん。やっぱりこちらが逃げたように見えて(まぁ、そう言われればそうなのだけど)、それが気に入らなくて追いかけてきた様子。まぁ逆でも僕もそうする。

でも、まぁそれほど怒っているようにも見えず、だんだん会話の内容が小さくなってくる。なんだか、20ユーロだか、小金をくれ、と言っている。ベンツに乗っているのにみみっちい話だ。まぁこっちが悪いのでそれくらいは出してもいいかな、と思ったのだけれど、そこはさすがに国際法務。

「何言ってるの。それ、大した傷には見えない。払う必要ない!」的なことを主張して、とうとう押し通してしまった。

・・・凄い。こりゃ、勝てないな。・・・なんとも力強い味方を得たものだ。

かわいそうな立場のイタリアのおじさんなのだけれど、お前のミラーの部品落ちてるぞ、と教えてくれて、車に戻っていった。

とにかく、気を落ち着けよう。

建物の方から車が出てきて、どけ、と言われたので、少しだけ車を動かすと、そんなつもりはないのに、また縁石に乗り上げる。落ち着け、落ち着け。

なのに、先ほどのベンツのおじさん。いい人を最後まで演じてくれようとして、先に出ろ、と合図している。もういいから早く行って...

しばし粘って、ようやくベンツが出発してくれた。

さて、改めて外に出て、先ほどまで悪態ついていたフォードC-MAXへの影響を見る。

この段階では、アルファロメオじゃなくてほんとによかった、とつくづく思う。あの美しいイタ車に傷はつけたくない。

見てみると、ドアミラーの先端に、最近よくある、ウインカーがついているタイプの車だった(今頃気づく)。そして、そのウインカー部分の透明なカバーが吹っ飛んでいた。つまりは、ウィンカーのランプがぶらぶらしていた。

さて、次の問題は、レンタカー店への面倒な説明。また、この壊れた状態でこの先1週間、車に乗り続けても大丈夫なのだろうか?ということだ。

普通に考えると、レンタカー店にもどって、事情を説明することになるのだろうけれど、そうすると、時間的なものも含めて、この後のスケジュール(というほどのきついスケジュールはさすがに立てていない)に影響がある。すぐに治らない場合、車の変わりがないと、非常に困る。

ともかく、ランプ自体は生きていて、ウィンカーを入れると...ここでウィンカーを入れると、かならずワイパーを動かすという状態もある。なにせ、ウィンカーのレバーとワイパーのレバーが日本車と逆なのだ...ちゃんと点滅している。

とりあえず、吹っ飛んだウィンカーのカバーを探しに行くことにした。とりあえず、接着剤とかで1週間持たせられないか?

Jに車の番をしてもらい、走って問題の場所まで戻る。駐車できる場所を探している間にかなり前に進んだので、そこそこ距離はある。

だいたいこのあたりだよな。まあレンタカー店を出てすぐなのだけれど。

あ、あった。

幸い、ほかの車にも踏まれず、カバーが原型をとどめてそこに転がっていた。

回収!

また走って車に戻る。イタリア、ナポリで、早々にウィンカーのカバーを掴んで走り回ることなるとは...人生、何が起こるかわからないものだ。

さて、一応理系。工学部卒。知財の仕事はしているけれど、会社もがちがち製造業だ。加えて自分でバイクに乗っていたころは、ちょっとしたことは自分でやっていたし、こういうときの対応は...一応なんとかしてみよう、という気になる。

ようは、外れただけなのだ。もしかすると、少しくらい欠けたところがあるかもしれないけれど、致命的な外傷はない。奇跡的なくらいだ。

こういう部品のはめ込みは、ようは気合だ。ようするに、ちょっとした爪で引っかかっているだけなので、その分、はめ込みはきつい。バックミラー側のカバーをたわませて、隙間を広げて、がんばって押しこむ。

Jは心配そうにしているが、ここは文系より理系の出番だ?

5分ほど粘って、まだ入らない。なにかコツがあるはず。

Jに声を掛けられて、あとちょっと待って、たぶん、治るから、と伝える。

その2分後。はまった。えらい、俺。

完全に元通りに見える!走行振動で外れて落ちたりするようなレベルでなく、しっかりとはまっている。

落ち着いた。

なんというか、厄払いになったかも。

冷静に考えれば、つまりは自分が中央線になるべく寄って走るようにだけ気を付ければいい。あとは、徐々に、無駄に1.8mを超える車の車幅間隔になれればいい。

再スタート。気を付けて車を進める。うん、大丈夫そうだ。やっぱり緊張でかなり舞い上がっていたみたいだ。

しかし、相当に神経を使いながら、とにかく、ナポリからの脱出を目指す。高速道路に入ってしまえば、負担は減る。

シフトチェンジがぎこちない。思うところにシフトが入らない。ローに入れたつもりが3速に入っていて、エンストしそうになったり...

曲がるたびにワイパーが動いたり...

寝不足を忘れるほどの緊張感で車を進め、ようやく高速道路っぽいところに入る。

料金所のシステムがよく分らないけれど、しばらく走っていたら料金所があった。TELEPASSという日本のETCのようなものもあって(ETCの先駆けらしい)、それ専用レーンがあるが、ここには用はない。とにかく様子が分からないので、一番手動?っぽいところを常に選択する。

カードの発券機。お決まりのように車幅のつかめない車なので、シートベルトをはずして、身体を窓から乗り出して、ようやく取る。やれやれ。

高速道路。ついつい右に寄ってしまい、Jにそれを指摘されながら(助手席は怖いらしい)、ともかく進む。

どこへ進んでいるか?

本当は、まずカゼルタ、という王宮を中心にした広大な公園を見学しようかと思っていた。Jがこの日一番行きたがっていた場所と同じ方向だったと思ったのだけれど、ここはJの勘違いがあって、行きたがった場所をGPSに入れていたら、どんどん南下してしまっていた。カゼルタはナポリから見ると北のはず。

もう高速に入ってしまっているので、カゼルタは無視。ポンペイも無視。

すでに車は位置的にはアマルフィの東側を抜けてしまい、サレルノを抜けている。

Jが行きたがった場所。

チーズ好きのJとしては、この地方で作られる、水牛(バッファロー)モッツアレラチーズの工場見学と、チーズの購入がこの日の第1希望だった。そもそも賞味期間が3日くらいという非常に生っぽいチーズだから、お土産にはならないが...とにかく行ってみたい、とのこと。今回はエリア的にワイナリーにはいけそうにないので(ワイナリーはイタリア北部に多いとか)、これは是非希望に沿いたいところ。

目指すは、CASEIFICIOというチーズ工場だ。

to be continue...

ここまでの走行距離、だいたい80㎞ほど。












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