石の街、檸檬の国 ~南イタリア旅行記 その12 カプリ島 歩く~
カプリ島の長い防波堤の内側に船が着けられた。ポジターノからカプリ島までは25分ほどの、あっという間のクルーズだ。
こういう防波堤を歩くと、自然に海をのぞき込んでしまう。偏光グラスをかけて、魚影を探す。人が多すぎるのが難点だが、紀州釣りにはよさそうな防波堤。もちろん、船も沢山、観光客も沢山で、誰も港内向きに釣りなどしていない。港外向きもしていないが。
防波堤を人込みに紛れながら陸へ向かう。
港のすぐ横にあるビーチ。なかなか綺麗。考えてみると、砂浜らしい砂浜はここしか見なかったな...
カプリ島の全景だ。
カプリ島といえば青の洞窟なのだけれど...
今日は天気もよくて、やっぱり日頃の行いの良さだよなぁ、などと思いつつ、さて青の洞窟のツアーは...沢山、小型船が青の洞窟を宣伝しつつ係船してあるのだけれど...なんだか、今日は潮が高くて洞窟に入れないとか...なるほど、天気が良くてもダメなんだ。
なんとも、タイミングの難しい観光だなぁ。
が、まぁそんなことは実はどうでもいい。あまり固執していないので、さほど残念でもない。
ポジターノの港でも青の洞窟ツアーの看板と船、カプリに来てもそればかり。メジャーを嫌う、混雑を嫌う、というJと僕の共通のひねた価値観があって、どうでもいいや、と二人とも思っていたわけだ。
さて、では、カプリ島を楽しめるように楽しもう。旅は無理なく楽しめるように楽しむのが一番...無理なく...無理なく...なんだけどね...このあと、この旅で最大の無理(それはレンタカーかもしれないが)に晒されるなどとは、このときはまだ思ってもみなかった。
チケットを買って、こんな入り口を入る。
こんな感じのチケットで、こんな感じのゲートを通過して、
こんなケーブルカーに乗って、
こんな景色が目に入り、
こんなところに出る。
ここがカプリの街。カプリ島には、カプリとアナカプリという二つの街があり、カプリからアナカプリにはバスが出ている...らしいが、行ってないのでよく分らない。
しかし、極めて日本人的に考えると、こういった島、あるいは沿岸部の街は、だいたい海岸線に沿って開けているような気がするのだけれど、カプリもアナカプリも山之上。平地がないから、なのだろうけれど、少し不思議な気もする。
ここでもワンコのお出迎えを受けつつ、少し散策。
カニ。
エビ。
魚。
タコ。
ウィンドウショッピング、という訳でもないが、いちいちアートで面白い。カプリはこういうところなんだな。
揚句、
魚にプチトマトを咥えさせていたり...面白い人たちだ。
何か食べたいなぁ、などと言いながら、相変わらず優柔不断気味な僕はお店を決められず(だって、ピンとこないんだもんなぁ)、ともかく、アウグスト庭園に出てみる。
かなり乱暴なことを言うと、カプリの港、マリナ グランデの位置が四国でいうと新居浜あたりで、アウグスト庭園は高知市くらいにある。
カプリ島は四国に形状が似ている。ただし、四国より愛媛が大きくて、徳島と香川が小さい。例えたら逆に訳が分からなくなるけれど、あとあと便利なので例えておこう。
ふと目に入ったリストランテ。雰囲気が良さそう。
なにより、テラス席から、カプリの象徴ともいえるファラリヨ-ニ(海に突き出た岩山)が見える。
ここは、Ristorante il Geranio。
これ、小さなイカのフリット(揚げ物)なのだけれど...ちょうど日本のホタルイカのようなサイズで、これが滅茶苦茶美味い。
いくつかいただいて、まぁ美味しいのではある。景色もいい。
しかし、騒音が...
どうして、食事中、大騒ぎして動き回って...こんなに落ち着きがないのだろう。隣国のアジア人は。周りへの気配りというのは、日本人はそれはそれで気の使い過ぎの面もあるけれど。
なんとなく気分も悪いので、店を出る。
公園を散策。
マリーナピッコラに降りる九十九折の道。クルップ通り。降りてみたい気もするが、降りたら上がらないといけない。やめておく。
・・・考えてみたら、ここを降りておくくらいにすればよかったんだよな...
さて、このあとどうしよう?と考えた。
四国で言うところの室戸岬方面に、どうにも遊歩道がありそうだ。海岸線というか断崖絶壁の上を歩く感じ。距離的にいって、室戸岬を回り込んで、経常的には阿南市。位置的にはもっと南かなぁ、というところに、天然のアーチ、という景勝地があるらしい。
とりあえず、トラガナ展望台というところに行くが、ここが通常の観光客のビュースポットである、ということも知らずに、ずんずんと先へ進む。
たしかに景色は素晴らしい。トレッキングモードで歩いている人もそれなりにいるが、それほど多いわけではない。
当初は、別荘かな?という建物がおしゃれに並ぶ小路を歩いている感じだったのだが、どんどん道がハードになってくる。起伏も激しい。
分かるだろうか?カモメではないよ。これはアルバトロス、アホウドリだ。初めて見た。
こんな道を延々と歩く。Jはだんだん無口になる。僕はこういう状況は結構燃えてくる。
そして、Jにとってはとどめ。こんな登り階段が延々と続く。
こんな洞窟が途中にある。
洞窟を抜けても階段は続く。
入口にようやく到着。
ここにリストランテっぽいものがあるのだけれど、さほどおいしそうな雰囲気ではない。
ここからは、今度は海へと下る坂道が実は続いている。
Jは、ここを降りたらもう登れない、と断念。
ここまで付き合わせて、歩かせて、肝心の天然のアーチが見れないというのは申し訳ないのだけれど...
仕方なく、独りで行ってみる。
これが天然のアーチだ。なかなかの景観。Jのために沢山写真を撮る。
こんな感じにいくつか展望場所がある。ただ、近すぎて、全体感がカメラに収まらない。
坂を登り、一休みしたJと合流。
帰り道、ヴィラ ジョヴィスという宮殿跡地など近くにあったようなのだけれど、もうできるだけ歩きたくない、というJの心をくみ取って、カプリの街の方に戻る。
白い石の歴史。そんな街並みを臨む。
ケーブルカーに乗り、港へ。流石に疲れたので甘いものを...ジェラートをいただく。
かなりの疲弊。
カプリって、なんと疲れる島なのだろうか。
本来、見るべきところではなくて、あまり行かないようなところを見てきた、というのと、その分思い出にはなるけれど、犠牲にした体力は大きかった。
個人的にはちょっと面白かったのだけれど、Jには悪かったなぁ。
船に乗り、ポジターノへ戻る。
少し、砂浜で夕暮れの風に吹かれる。気持ちいい。
何が釣れるのだろう?
夕方なのだけれど、まだ空は昼間だね。
ホテルのリストランテで夕食を取る。南イタリア最後の夜が更けていく。
to be continued...