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2014年9月

2014年9月21日 (日)

石の街、檸檬の国 ~南イタリア旅行記 その7 アマルフィ海岸。その渋滞。~

サレルノの海岸線の道路からすぐに出ることができる護岸では、釣り糸を垂れている人がちらほらいる。そんなに真剣に釣りをしているような雰囲気ではなく、なんとなく、日本でもちょっと気軽に釣りをしている方たちを護岸や防波堤で見かけるけれど、そんな感じ。

あ、真剣に...というのは表現悪いな。スタイルはそれぞれ自由。10万円の竿使っていようが、5000円の竿使っていようが、それはその人の楽しみ方だから、真剣とか真剣じゃないとか、そういう問題ではない。

僕らのようなマニアっぽい釣り師の方が、実は妙な思い込みに捉われて、楽しみ方を減らしているのかも知れない。

Img_3690_r人に迷惑を掛けず、ゴミを捨てず、楽しめれば、それはたぶん一番心地よい釣りなのだろうと、今は思う。

さて、サレルノを出れば、間もなく起伏と九十九折。海沿いの崖の上をひたすら走る、アマルフィ海岸沿いの道路に入る。

日本で地磯で釣りをしていると、こういう道は結構通るのだけれど、何しろ距離が長い。ひたすら同じような道が続き、しかも車幅は狭いし、トロトロ走っていると、まったく先の見えないコーナーで後ろから追い抜かれるし、前からも平気で反対車線、つまりは僕の目の前にはみ出して追い抜きを掛ける車がいるし...で、これがまた大変。

織田裕二のアマルフィの映画では、この道を心地よく駆け抜けていくシーンが記憶に残っているが、走っている本人は海を見ている訳にもいかないし、ひたすらに次から次にやってくるきついコーナーを、まったくトルクのないドン臭い車で抜けていくしかない訳で...本人的にはまったく心地よくはない。

しかし、距離が長い、とはいっても、サレルノからアマルフィまでは25kmほど。25kmこの道を走るというと気が遠くなるが、遠すぎる距離ではない。1時間も走れば着く距離なのだが...

アマルフィ海岸SS163道路は、渋滞する。混むのだ。観光案内にも混む、書いてある。これはほんとだ。観光バスもどんどん入ってきて、どんどん混む。あの映画は美化し過ぎだと思う。

しばらくは、ほどほどに車がいる状態で、先述したような状況ではあるけれど、淡々と距離を稼いでいた。

ところが...だ。

いくつかの街。その海岸通りを抜け、崖の上を走る。

...と、少し海岸から離れて街の中へ入る。道なりだから仕方がない。

あとで地図を見てみると、ここはMINORIという街だったようだ。何故だか知らないが、いきなり90度、山手方向に道が曲がり、180度Uターンして、また海岸方向に出る、という、しかもそのUターンする地点までの距離が無意味に長い、という、意味不明な道路の形状?になっている。しかもしかも、そのUターンポイントが交差点になっていて、もう無茶苦茶。

とにかく渋滞でまったく車が動かない。最初は事故でもあったのか?と思ったけれど、そうではなかった。小一時間、ここでつかまる。

ようやくここを抜けて、心地よく走っていると、ふと海側に、なんだかすごい建物が目に入る。

P5020443_rおそらくは相当古い建物なのだろうけれど、岩場、磯場の景観と馴染んで、圧倒的な雰囲気を醸し出している。

車を停めて、ちょっと近づいてみる。

どうにもリストランテとして営業しているようだ。

P5020446_r階段を降りると入り口がある。

P5020450_r階段の上に足が見えているが、これはJ。

物怖じをしないJは、食事をするわけでもないのに、「ちょっと中を見せてもらっていい?」と聞いて、それで「いいよ!」という返事をもらってくる。

小心者の僕には、本当にありがたいパートナーだ。

P5020451_r当然ながら、圧倒的に見晴らしのいい、素晴らしいリストランテ。

時間が取れたら、ここでディナーしてもいいね、などと言いながら、結局、併設のカフェでカプチーノを...飲むこともなく、お礼をいってここを出る。

しかし、本当に石が伝える歴史は、そのまま後世に伝えられていて、普通に使われている。凄いなぁ。ヨーロッパは。

そしてとうとう...

Img_3696_r

アマルフィだ。

1時間で着くと思ったら、3~4時間かかってしまった。

最後の渋滞。アマルフィの街中だ。

バスの駐車場かな?その山手側に、これまた石積みの建物?道路の上にアーチが掛かっているような形になって、そこの下を抜ける山へ登る道がある。

この手前で交通整理のおじさんにさんざん停められて、ようやく坂を登り始める。

この日宿泊するホテルは、Grand Hotel Excelsior Amalfi。

ホテルサッシからはグレードアップして、4つ星のホテルだ。

アマルフィはほとんど平地がないため、急峻な山肌にへばりつくようにしてホテルが建てられている。このホテルもそんなホテルのようだ。

しばらく走って、ようやくホテルに到着する。

そんな地形なので、駐車スペースも極めて狭い。

とりあえず、ホテルの入り口前(ロータリーなんてものはない)に車を停め、ホテルの人たちに荷物を預け、車の鍵も預ける。

ふぅ...今日も何事もなく運転を終えられてよかったよ、ほんと。

P5040808_rチェックインはJにお任せ。

完了したら、部屋に案内される。どうも本館?ではないようだ。

本館内のエレベータで下に降りて(ロビーはホテルの一番上にあって、部屋は下の崖沿いにへばりついている)、本館から海側に抜けて右手方向に進むと、石積みのエレベータがある(エレベータが石積みではなくて、外壁がね)。写真に写っているのは、誰か知らないが、これは別の宿泊客。

ガタビシいってるエレベータで下に降りると、客室の建物の入り口がある。

P5040815_r_2ここを入ってすぐ、ようやく僕らの部屋だ。

P5030454_r広くはないが、綺麗な部屋。

ホテルサッシが特殊だったから、なんだか、少しホッとする。

P5030466_rもう、夕暮れ迫るアマルフィの街をホテルの窓から見下ろす。

ふぅ。着いた。

飯、食いにいかなきゃなぁ...

何か、フレッシュなものが食べたいのだけれど、さてさてアマルフィの食事は??

to be continue...

石の街、檸檬の国 ~南イタリア旅行記 その6 サレルノ~

マテーラ サッシを出て、ひたすら西へ向かう。

この日は一気にアマルフィまで移動する。車の運転もかなり慣れては来ているが、未だ時折ウィンカーを出すつもりでワイパーを動かしたり、慣れない左ハンドル右シフトにまごつき、また右に寄らないように気を使いながらの運転であることには変わりはなく、疲れることが朝から想定できそうな日だ。でも、いよいよマテーラだ。わくわくする。

例によってWi-Fiの電池を気にしながら、iphoneのGoogleマップ頼りの移動。

高速道路に乗り、potenzaを過ぎる。あの、タイヤのpotenzaなのかな?

こうして南イタリアの道路をひたすら走っていると、どうにも、都市(というか街)が山の上、岩山の上と言った方がいいだろうか?そんな高いところにあるのに気づく。

特に水の便を考えると、間違いなく不便なような気がするのだけれど、何故なんだろう?

やはり、過去、戦争が繰り広げられていたころ、攻め込まれにくく、敵を把握しやすい場所に街を作ったのだろうか。

歴史が今を形作っているのだよなあ、などと考えつつ、ひた走っていたのだけれど...

どうにも、途中で道を間違えたようだ。何故だか知らないけれど、南へ進んでいるような気がする。

iphoneのGoogleマップもGPSだけを頼りに位置表示しているため(通常はWi-Fiや携帯基地局の位置で補完されていると思う)、まったく見当違いな位置を表示していたり、何分も自分の位置が変わらなかったりするため、これには往生している。

仕方なく、一旦高速を降りて、Uターンする。ただでさえ疲れる移動なので、こういうロスは結構つらい。

そんなこんなで、アマルフィ海岸に入る手前の街、サレルノが近づいてきた。

サッシからサレルノまでだいたい200km。ここから先、アマルフィ海岸は道もぐっと狭くなり、蛇行してくる。

サレルノで昼食、それと、サレルノ大聖堂くらい見てみようかな。

サレルノ。イタリアの都市は交通が大変。渋滞だらけだし、道が狭いうえに路駐だらけだし、お世辞にも交通マナーがいいとは言えないし...

Img_3681_r

また、街中に入ると駐車場が少なく、また、駐車場には車があふれている。

道路わきのパーキングスペースへは車間距離ぎちぎちで縦列駐車されているが、こんなところにどうやって車を入れ、また出すのか???想像もつかないような停め方がされていたりする。とても俺には無理だぞ...

サレルノの海岸通り近くをグルグル回り、ようやく、落ち着いた駐車場を見つける。

さて、と。

車は停めた。

しかし...この機械、どう使うんだ??

つまり、駐車券の発券機って、日本でもありますよね。あれ。

でも、まったく使い方が分からない。

ふと見ると、おつりが残ってる。

イタリア、サレルノの駐車場の発券機でおつりのコインを僕が見つける可能性、確率...そんなことを考えると、なんだかとても貴重で、幸運な気がした。

なので、この1ユーロコインは財布に入れておいた。

それはそれとして...つまり結局どうしたらいいのか分からなくて困っていたら、僕らの後ろか感じのいいイタリア人がやってきた。

「お先にどうぞ」と話かけたわけではなくて態度で示すと、サクサクっとお金を入れて、駐車券を出している。

Jに目で合図して、どうやって使うのか、聞いてもらう。

まぁ、当然にそんなに複雑な操作が必用なわけではなくて、お金を入れて、ここを押す、的なところではあったのだけれど。

ともかく、車は停めた。

飯を食おう。

しかし、車の運転、特にサレルノの市街地に入ってからの運転は緊張しっぱなしで、そのせいか全く食欲がない。どちらかというと、お腹が張って、食べたいという気にすらならない。

でも、やっぱり食べておかないとな。

適当に駐車場近くの店を選んで、よく分らないながらに注文する。

Img_3682_r

Img_3683_rこんな店で、こんなショートパスタ。

かぼちゃっぽいソースかかっていたように記憶しているが、食欲がないので、ちょっとしつこく、重くて、あまり進まない。

もう少しフレッシュなものが食べたい。パスタもあっさりした、できればロングパスタが食べたい(ロングパスタのメニューがイタリアはどうにもきわめて少ない)。

スプライトが美味しい。そんな記憶だけが残っている。

サレルノ大聖堂を目指して、Wi-Fiとiphone頼りに歩くが、まったくまともに位置表示してくれない。やはり左右に迫る石積みの建物のせいか?

そんなに遠くないはずなのだけれど...

Img_3684_rやもすると、少し怖いような薄暗い路地もある。周りは外人しかいない...当たり前だけど。

かなり歩き回って、ようやく到着。

P5020346_rサレルノのドゥオモ(大聖堂)

閑散としているし、それほどのものには見えない。

しかし、近づいてみると、柱の彫刻や、棺のようなものの彫刻も非常に凝っていて、やはり凄い。

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P5020363_r石の文化は、歴史を今に伝える。木の文化の国から来ると、それを痛感する。

中に入ってみる。

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P5020419_rただただ、美しい。

とくに天井画には見惚れてしまう。さすがイタリア。日本の文化とは明らかに違う、きらびやかな、それでいて静謐な、そんな空気。

写真の下から4枚はすべて地下のクリプトの写真。聖マタイのお墓がある。

日本でも、古い歴史をもつ神社は結構好きだ。

その場所のシンとした空気。その場所がもつ空気感、見えないけれど何かしらの力がそこにはあって、心を押し付けて、それでいて苦しくなくて、清々しい。八百万の神という日本の神様。お社を包む木々に宿る、そんな力のような気もするし、そのお社自体にもそれを感じる。

まったく見た目は違うけれど、クリプトには同じような空気がある。いや、ちょっと違うか?

この石、それと芸術で囲まれた空間には、人々が祈った、その祈りが染みついているのかな?

少しだけ、疲れも取れた気がする。

さぁ、行こうか。アマルフィへ。

to be continue...