2013年8月13日。真夏の容赦ない陽射しが...地面をも溶かすような日が続いている。
心は釣り師。
だから、炎天下とはいえ、時間があるときに車さえあれば、釣りに行こうかな、という気分になるくらい、気持ちの方は落ち着いてきたし、「釣り」に対してあまり感じられなくなっていた高揚感もいくらかは感じられるくらいに気持ちも戻ってきている。
ときどき、釣りの夢を見る。
盆の連休は6日間。
その5日間、レンタカーを連続で借りてみた。格安レンタカーは庶民の味方だなぁ。それだけ借り続けても1.7万円弱。
連休の前半はJが広島に遊びに来ていたので、実はちょっと周防大島に行って、小一時間ほど、それこそ何年振りか覚えていないくらい久しぶりに海に浸かってみた。
・・・これほど疲れるか?というくらいその短時間で疲れたのは、久しぶりだからか、あるいは歳だからか?どっちもかな...
さて...
つまり釣りにいったのは連休に入って3日目。
車はあるので何時に出発してもいいのだけれど、大畠基準で朝の6時半ころが干潮だ。
フカセも考えたのだけれど、この夏場だと入れる地磯が限られるし、なんとなく行きたい場所が頭に浮かんでいたので、紀州釣りを選択。久しぶりに団子を握ることになるが、まぁできる範囲でやってみよう。
上げ5分から、下げはじめの時合までをイメージして、まぁ、8時くらいに出ればいいか、と考えた。
この時点ですでに久しぶりの釣りの弊害が出始めている。
今住んでいるのは広島市佐伯区五日市。以前は旧大野町という宮島より西側だった。
五日市からそこまで行くのに30分掛かるという計算がまずできていない。加えて、こんな通常の人が移動するような時間にスムーズに車を走らせることができるはずもない、という計算もできていない。
結局、家を出たのが8時半ころ。周防大島へ渡る大島大橋に到着したのは10時40分ころ。さらに車を走らせて、釣り場に到着したら...11時半...
う~む...大畠基準で12時47分だから、ここだと13時くらいか?
団子を打って場を作るのに、いくらこの海が高活性な時期でも1時間はかかるから、上げ止まり前の時合ギリギリか...
フカセなら速攻で結果を出せるが、団子はこの仕込みの段階が重要だからね。
ともかく、
紀州マッハ(青)、紀州マッハ攻め深場(緑)を1:1でバッカンに入れて、細挽きサナギを入れる。・・・あ、押し麦買うの忘れた...どうも久しぶりだと...いろいろと...
3年間眠っていたアオハタのコーン缶の空き缶(後生大事に持ってたもんだ...よくも...)で少しずつ、団子の感触を確かめるように海水を入れていく。
こんな感じだったかな?
辿ってみる。記憶は自信ないので、HP「いつも海を見ていた」を開いて記録を辿ってみる。
驚いた。なんと最後に紀州釣りをしたのは、2007年9月8日。6年ぶりかよ...
という訳で、6年ぶりなら当たり前だけれど、すべてが自然にできない。団子作りなんてその最たるものだ。
ちなみに、最後にチヌを釣りにいったのはフカセで、それも2010年5月4日だったのだけれど、そのせいで、フローティングベストのポケットのファスナーというファスナーのすべてが塩噛みで固着し、塩噛み解消用の専用ムーススプレーを買ってなお動かず、少しお湯をいれて洗剤を溶かしたバスタブに丸一日漬けても動かず、最後にペンチで思いっきりひっぱったら、ファスナーの歯?が3本欠けて、ようやく動いた...(一つ目が...)というような状況だった。なにせポケットの中にいろんなものを入れたままなので、開けないと買わないといけないものが山ほど増えるのでね..
とりあえず、一つ握ってみる。
う~ん、ハードワークだなぁ。団子って。などと、この時点で先が思いやられてくる。
下手投げで、昔のように投げてみる。まだ竿を持っていないので普通に飛んで、トッポーンといういい音が聞こえた。
なんとかなるかな?
3つほど団子を放り込んでから、仕掛けづくりだ。
前夜、浮きケースが見当たらなかった。越してきたとき、チヌ釣り道具だけは忘れないようにしたつもりだったのだけれど、忘れたのかな?
いろいろ探してみると、使わないような20本近い棒浮きの中に、ケースに入ったままの永易浮きssサイズがあった。それと、自作の自立浮きが一つあった。
紀州釣りで僕が使う浮きは自立の浮きだけ。思うようなものが売られていない(自立浮きはおもり負荷が大きいものしか売っていない)ので、以前は浮きは自作していた。
永易浮きに出会ってから、僕の紀州釣りのスタイルは変わって、基本的には永易浮きを使うようになり、永易流と言われる、適切なハワセでエサ取りのアタリを消し(感じられる程度に残す場合もある)、本命アタリを演出する...そしてエサ取りの時間を固く握った団子でしのぎ、本命がエサ取りの後に寄ったときに食わせる...ものすごく概略をいうとこんな感じの釣りに傾倒した。
永易さんとももう長いこと会っていないな。まぁ釣りをしていないのだから当たり前だけれど。
あれから、彼はもっともっと進化して、もっともっと道を究めたんだろうな。いろんな葛藤はあると思うのだけれど、あれだけ一つの道を歩める永易さんには、今更ながら尊敬の念を感じるところ。
さて、唯一の永易浮きをセットして、ハリスはたぶん3~4年前に買ったのだと思うけれど、Vハード1.25号。少なくとも紫外線は浴びてないし、まぁ大丈夫だろう。
空バリを団子に包んで、握る握る握る。
・・・なんか自信ない...
エイっと投げたら、案の定空中爆発。やれやれ。こりゃだめだ。
今の僕にはこの団子の水分量じゃ握れないな。・・・と早々に諦め、悟って、水分補充。
握って、投げる。今度はうまくいった。
棚を取りたい。このポイントはよく知っていて、だいたい今の水位だと竿2本というところのはず。
竿2本+1mくらいの棚設定で投げているのだけれど、団子の着底が分からない。これじゃ棚もつかめないので、次は70cmほど詰めてみる。浮きが浮き止めに引きずられて沈む。
と、思ったら浮いてきた。これは団子のほぼ真上まで浮きが移動して顔を出したのではなくて、団子が割れたっぽい。
いかんなぁ。これはいかん。
もっとしっかり握る。しかし、こりゃ腕がもたんぞ...しかも思うように固く握れない。手が痛いばかりで力が逃げる。参ったなぁ。
浮き止めを20cmほど深くセットして、投げる。
これでトントンかなぁ。しかし、また割れるのが早い。
さらに諦めて、さらに悟って、今度は紀州マッハ緑を追加して、水分を足す。緑は粒子が細かいため、非常に握りやすい。また、水分をある程度増やしても綺麗に割れてくれるのがマッハのいいところ。
たぶん、今日のコンディションだと、糠団子じゃ無理だろうな。
そのあと、さらに3投ほど空バリを包んで、投げて、とりあえず棚設定を終える。
団子は少しは持つようになったけれど、とても1分も持たせることができていない。
相当魚の活性が高いようだ。
とめどなく流れ出る汗。
まったくもって、日ごろ買い物に行ったりしているだけでも暑くて死にそうなのに、日中、一番気温が高くなる時間帯に焼けたコンクリートの波止の上に座り込んでいるのだから、もう、逃げたいくらい暑い。熱い、と書いた方がいいくらいだ。
1時間も団子を握っていると、すでにペットボトル一本の飲料が空になっていて、呼吸も荒くなっている。昔々若いころは、夏場でも水分とらずに一日釣りをしていたのだから、随分普通の身体になったもんだ。
沖アミは瞬殺されている。
ベラを一匹掛ける。こんなやつや、チャリコなんかがウジャウジャいるんだろうなぁ。
コーンを3粒~4粒刺し、団子を握る。・・・すでに結構辛い。
コーンが1粒だけ残る。次はコーンが潰れている。
我慢して団子を握る。投げる。
着底。
軽い団子アタリのあと、浮きがトップまで沈むようなガツンとした団子アタリ。間違いなく出てる出てる。チヌだぞ。
久しぶりの高揚感。
スーッっと、浮きが綺麗に入る...アワセ!
ガツン!
久しぶりだなぁ、この感触。
いまだ使っているがま磯プレシードSP(もう知っている人が少ないだろうなぁ)越しに、底をグーンと切る、そして首を振るチヌの手応え。
本当に久しぶりだなぁ。
底を切って、少しその感触を楽しみ、浮かせに入る。
35cmくらいはあるかな?いや、もうちょっとあるかな?
銀鱗。黒っぽいチヌが現れる。なんだか、こみ上げるような懐かしさを感じる。
玉網を伸ばし、浮かしたチヌを掬う。
チヌ。38cm。ほんと、立派な魚だよな。サイズが、じゃないよ。チヌという魚がね。
久しぶりの釣りというのは、このあたりでまたたどたどしさとして影響してくる。
要領が悪い。とりあえず焼けた波止にチヌを置けないので、バッカンに水を汲んで波止にかける。これを3度。その間片手でチヌの入った玉網を持っている。針が外れていないので、クーラーに預けた竿が落ちる。
針を外してストリンガーを...と思ったら、そういえば2010年の最後の釣りでストリンガーを海に忘れて帰って、今日は来る途中に買っていたのを思い出し、ストリンガーをパッケージから出して、使い方にちょっと悩んで...あ、タオル...チヌを掴んでストリンガーにようやく掛け...あ、写真撮らなくちゃ...デジカメがないので、手の糠を海水で流して、首にかけたタオルで手を拭いて、iphoneを取り出して撮影...ようやくストリンガーにかけて一段落。
以前なら、釣りの流れを止めずにできていたこんなことで、随分無駄な時間を食ってしまった。つまりは釣れるはずのチヌを釣り逃したことになる。
今は上げどまり前の時合なのだ。
コーンを刺して団子を握る。
雰囲気はあるのだけれど、団子が持たない。
こんな時に団子のセッティングを変えたくはないが、仕方なくさらに緑マッハを追加、サナギ粉も追加して水分ちょっと多めにして、そして団子を握る。
団子はいい感じ。団子アタリも出ている。
くそ~、ボケもないし、せめて練り餌でも買ってくればよかった...
仕方ない...ちょっと離れたところで波止のヘリまで距離のあるところを歩いているフナムシにターゲットを絞り、近づいて、手ではたいて弱らせる。
針に刺して、団子を握る。ああ、左腕が痛い。辛い。
投げる。
アタリがうまく出ず、フナムシが半分になって帰ってくる。
またコーンを4粒刺す。
投げる。
団子アタリ。
割れる。
沈む...
アワセ!
ガツン!
よっしゃ!さっきよりは大きいぞ!
少し過剰なほど時間をかけて、ゆっくり...引きを楽しみながら浮かせる。
玉網に綺麗な銀鱗が...さっきより形のいいチヌが滑り込む。
チヌ。40cm。肉厚で重厚感あって、なかなか。本当に綺麗なチヌだ。
ここでも若干あたふたして、もう一枚、というころには時合終了。
潮が止まる。
とりあえず、手返しは続ける。
しかし、このころには、竿の上げ下げも辛くなってきた。
握力がない。握ろうと思っても力が入らない。
おまけに暑さもピークで、クラクラする。体力ないなぁ。
まだ釣り始めて2時間半くらいなのにね。
下げはじめの時合は、おそらくチヌがいたと思うのだけれど、そのころからの向かい風に竿先にラインを絡めたり、団子の握りが甘くてうまく持たせられなかったりで、結局逃してしまった。
さらに1時間半ほど頑張って、諦めた。
これ以上、もう釣りにならない。団子が握れない。
せめてもう少し涼しければ...と思うのだけれど、暑いのを分かっていてこの時間帯に竿を出したのだから仕方がない。もともと4~5時間やれれば上等だろう、と思っていたのだから、まぁこんなものだろう。
チャリコを一枚追加しただけで、竿を畳んだ。
チャリコは15cmほど。当然リリースサイズなのだけれど、いただいて帰る。
クラクラしながら片付けて、波止を流して車に戻る。
エアコン全開!
ともかくコンビニまで急げや急げ!冷たいものが欲しいぞ!
家に帰る。
今日の釣りからは、釣った魚はすべて自分で調理しなければならないし、基本的にすべて自分で食べないといけない。
40cmクラスのチヌともなると、これ一枚で3人家族で食べれるほどのボリュームだから、もろもろ考えても、持ち帰りは2枚が限界だな、と改めて感じる。
今後、釣りにどう向き合うか?は、よく分らない。
車もないし、結構暇もないので、たまにしか行けないだろうけれど、食を釣りにより一層近づけないといけない。
チヌはすべて3枚におろして、一枚の半身を刺身にする。そのうち3割ほどは翌日チヌ茶漬けにする。残りはその日に食べた。まだちょっと本気のチヌの味ではないな...
アラは塩焼きと汁に。
半身はコブ締めにして、翌日食べる。なかなか美味い。
半身は西京味噌とみりん、日本酒で作った味噌床につけて、2~3日間をおいて西京焼きにしてみよう。
残りの半身は冷凍。これは追々工夫して焼いてみる。
チャリコはどうしたか??
これ、やってみたかったんだよね。
鯛めし。釜のサイズから、これくらいの鯛が限界なんだよね。
焼いて入れればいいのだろうけれど、まぁそのままでいいだろう。
研いだ米に適量の水を入れた炊飯ジャーの釜に、しめじ、竹輪を乱切りしたものを入れて、醤油、日本酒、みりん、塩を少々。様子が分からないので、少しだけ昆布も入れて、軽く塩を振ったチャリコをおいて炊飯。
結果としては、鯛が小さいので思ったほどダシが出ず、また味付けを薄目にしていたこともあって、少々味が薄くなってしまった。けれど、身をほぐして混ぜ込んだ鯛めしは、なんだかうれしい。
翌日、チヌ茶漬けにはこの鯛めしを使った。やはり味が少し薄いので、コブ締めのチヌに醤油をかけて投入すると、なかなかよいお味に。
うむ。素材から調達する料理は、なかなかまだまだ納得はいかないけれど、結構面白いかも知れない。
包丁も買いそろえるかな~。ヘンケルの万能包丁一本じゃちょっと物足りないし、食材に申し訳ないかも知れないね。
楽しかったか?といわれると、しんどかったし、いまだ手は痛いし...
でも、釣りって、楽しいとかなんとか、そういうもんじゃないよね。いいよね。釣りは。
また、少し季節が変わったころになるだろうけれど、海を見に行こう。