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2013年5月

2013年5月28日 (火)

羊の国でニジマスと...ニュージーランド旅行記その6 ~レインボー!!~

いったん、フィルの経営しているB&B、つまりベッドアンドブレックファーストに立ち寄って、トイレを借りる。

ニュージーランド南島、カンタベリー地方の雄大な山のなかに宿泊施設を構え、冬はスキー、夏は釣りやトレッキングのガイドをしている。なんとも幸せな人生だよなぁ。

シーズンオフなのか、施設自体はちょっと掃除が必要そうだったけれど、WEBページを見る限り、シーズンになれば綺麗にしているんだろうな。

そこから、一路、ポイントを目指す。

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雄大な景色の中を、蛇行し、確かに流れる川。

日本の渓流とはまるで雰囲気が違う。

これなら確かにフライも投げやすいだろうな。日本のような木々が生い茂った渓流だと、なかなかバックキャストできないだろうし。

もちろん、本流で釣ればいいんだろうけれど。

そして、リバーへ。

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しばらく歩く。

「待て!」とフィル。

「あそこにいる!」と。

見えるか?と聞かれるが、当然見えない訳がない。

こちとら何年海を、海の中をのぞき続けてきたか。

立派な魚体の影が見えている。

ポイントに上流から近づくな。魚は常に上流に頭を向けているから気づかれる。

下流から回り込んで...

フィル、大丈夫だよ。魚の習性もよく知っているよ。

ポイントの下流側に立ちこみ、アップストリームキャスト。魚の鼻先へ上流からフライを流し込むわけだ。

フライはレイクでのドライフライから、シンキングタイプの川虫を模したようなものに交換され、渓流の脈釣りで使うような毛糸を目印にリーダーに結び付ける。

慌てるな。

いや、慌てるよな。もしかしたら今日唯一のチャンスかも知れないんだから。

こんなサイトフィッシングがそうそうできるとも思えない。

ラインを下流に流して、張って、キャスティングを始める。

慌てるからうまくいかない。

冷静に、冷静に...念じる。

慌ててシュートするなよ。じっくりラインを伸ばして、十分上流に落とすんだぞ。

・・・失敗。

・・・また失敗。

・・・行った!が、流す筋が違う。

・・・あ、慌ててラインが水面を叩く...

警戒心抱かれたら終わりじゃ...

大丈夫かな。

何度目のトライだろう...

今度こそ筋に入った...と思ったら、目印が動く...アワセ!グンっとロッドが引き込まれる。

フィッシュ!(と、心の中で)

猛然と、まずは上流に向かって走る。グラス比率の高い柔らかいロッドが絞り込まれる。

と思ったら、今度はさらに猛然と下流に向かって走る。走る。走る。

ラインを手繰ってファイトしようとしたら、リールファイトをしろ、とフィルの指示。

・・・う~む、三平はリール使ってなかったがなぁ。

などと考えている余裕がないくらいの引きだ。

どうも、このフライリールはドラグを内蔵しているらしく(ここまで気づいていなかった)、フィルはラインブレイクを避けるため、ドラグを効かせて魚を走らせて、弱らせろ、と言っているようだ。

任せて!

・・・といいたいのだがとっさに英語も出ないし伝わらない。

魚を掛けてしまえば、実はさほど慌ててはいない。何せシモリも藻場もない浅い川だ。

存分に走らせればいい。

が、どうもやっぱり慌てていると思われているのか、僕が左手をロッドに添えようとすると、どうも僕がリールを巻こうとしているのと勘違いしているようで、左手を出すなと指示が来る。

う~む、僕の磯竿でのロッドワークは基本両手(普段は左で竿をもって、右手は竿を右に倒すときはリールシートより30cm上くらいを、左へ倒すときはロッドエンドに添えている)なので、片手でのファイトは馴染まないだけなんだけどなぁ。

自由にやらせてもらいたいが、まぁ仕方がない。

そう、魚がどんどん走るから、こちらも川岸にあがって魚を追いかけるように走るしかない。

10m、20mは走る。面白い!

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そして、至福の時は、そろそろ終盤に差し掛かる。

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アルビノだろうか。白色の魚体に婚姻色を浮かび上がらせた、60cmは越えているだろうレインボートラウト。

下あごが出っ張り、いかつく、そして美しい。

自然に顔が緩んでくる。

まだ、アドレナリンが出ている。ドキドキする。

釣りって本当に面白いな。

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フィルに渡されたリストバンドのようなもの。これを濡らして、それでレインボーを掴む。

キャッチアンドリリースが基本のこの国では、やはり魚をちゃんと気遣っているね。

日本の形ばかりの放り投げるような似非キャッチアンドリリースとは違う。


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こんな小さなフライがロマンを運んでくれた。

ありがとう。


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そして、フィル。本当にありがとう。

興奮もまだ冷めぬ中、リバーサイドトレッキング、さらにリバーをウェイディングして渡ったり、先へ進む。

流れが速いので、足を取られそうだ。

Jはフィルに助けてもらいながら着いてきている。

リバーではルアーでは釣れないのか、またルアーを投げてしまったらフライはできないだろうから、そのためか、基本的に僕だけが竿を振っている。

なので、Jにはただのトレッキングになっている。

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いくつか指示されたポイントにフライを投げてみるが、反応がない。

一度車に戻り、移動する。

今度は少し狭い川だ。

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立ち込んで、ロッドを振る。振る。振る。

腕がもうパンパンになっている。何せひたすら何度も何度も振り続けるのがフライのキャスティング。ハードだ。

シュートしようとすると、どうしても力が入って、ロッドが後ろに倒れてしまい、ラインが力を失う。

アップ、ダウン、アップ、ダウン、アップ...シュート!

フィルの声。そう、上げる、ロッドはイメージとして直角上方向に向けるくらいで止める。

シュートはダウンのスピードを少し上げるだけ。アップを後ろに倒してはだめ。

分かってはいるのだが、不器用な男だからな~俺は。

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ああ、楽しかった。本当に楽しかった。またいつか、こんなフィールドでロッドを振ってみたい。

いや、みたい、じゃなくて、ロッドを振りに行けばいい。何も難しいことじゃない。

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自然の造形。

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雄大なニュージーランドの風景。

ここへいつか帰る?いや、もっと別の新しい景色を見に行こう。

竿を振れるなら、そこでも振ってみよう。


ああ、本当に楽しかった。

ありがとう。

...to be continue...

羊の国でニジマスと...ニュージーランド旅行記その5 ~雄大なり、鮮烈なり。竿を振る。~

やはり...とても重たい気持ちを引きずってしまうクライストチャーチ。

ガーデンシティと呼ばれるこの街。名物ともいえる美しい庭も見る影もない。少しずつ、しっかりと復興に向けて歩む姿は力強いが、その分重い。

釣りなんてしてもいいのかな?

とはいえ、

これだけは確実にやりたくて、日本から業者を通じてガイドを予約してある。

・・・朝、8:30。

こんな時間でいいのだろうか?

夜討ち朝駆けを基本とする日本の釣り師としては拍子抜けするくらいのゆっくりしたスタートだ。何せ、モーテルにガイドが迎えにくるのがこの時間なのだから。

もっとも、僕の終盤の釣りは、日が昇ってから家を出る、を基本にしていたので、まぁそんなに違いはしないのだけれども、何せニュージーランドにまで来て釣りをしようというのだから、気合が違う。

久しぶりにがまかつのフィッシングパンツに足を通す。かなり年期も入っているが、このあたりも気合の表れ。

こちらに来てからのニュージーランドの寒さは結構なものなので、さらに山間部(だと思っていた...後で甘かったことを思い知るのだが)に行くのだから、もっと寒いだろう。

足はウェーダーを履くだろうからまぁいいとして、上半身は暖かくしないとな。

といっても、釣り用の防寒着なんか当然持ってきていなくて、これも年期が入ったダイワのゴアテックスレインウェアのみ。最近はどうか知らないが、このころのダイワのレインは撥水性を失ってくると、なんだか水がしみてくる。ゴアテックスなのに不思議...

それはさておき寒いのは嫌なので、ユニクロのフルジップのフリースを下に着込むとしようか。

トイレに入っていたら、モーテルの駐車場に車の音がする。

慌てて出てみると、ランクルの脇ですでにJがガイドとにこやかに話をしている。当然英語で...

僕も降りて挨拶する。「おはよう、よろしく、僕田中...」うむ、情けない。

ガイド、フィルは爽やか系タフガイ?な感じで、ニュージーランドの自然に磨かれた、かっこいい男。優しげでよかった。

車に乗り込み、今日だけは、自分にできる最大限のコミュニケーションをとろうと、がんばってフィルに話しかける。

「自分は日本では磯釣り経験はある。でも、フライロッドは1度振ったことがあるだけ。ほぼ素人なのでよろしくね。」などなど...というほどネタは思いつかないが、まぁ見える景色について質問したり、どれくらい走るの?とか、どんなとこ行くの?とか。

Jがいるので、困れば聞けばいい。

車は郊外に向けてひたすら走る。街を抜けると震災のあとはほとんど感じられない。

・・・いた!
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牧場が広がり...いたいた、羊羊羊。牛も。

羊の国に来たつもりが、ここまでほとんど羊を近くで見ていない。

しかし、この羊という生き物、過剰なくらい人見知りなようで、20mほどの距離から一歩踏み出すと、ザザザザっと一斉に退却...

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ほら、こんな風に、すでに見えないほど小さな白い点々点々。

ひとしきり、羊に遊ばれて、あらためて車は進む。

広大な畑に自動散水装置。スケールが大きい。

どこまでも伸びる道...広がる青空...緑...遠くに雪を抱いた山々...

素晴らしい...

車はガソリンスタンドとコンビニ...というより田舎にある商店がくっついたようなところに入る。よく映画で見るような?そんな感じの店だ。

フィルは...

あ、なるほど。

どうやらここでフィッシングライセンスを購入するらしい。

__

なんだか妙にうれしい。これが一番の自分のお土産になりそうだ。

飲み物などをさらに調達して、車はぐんぐんと先へ進む。

わくわくするか?

そりゃ、するさ。こんな景色をどんどん進んでいくんだよ。

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そして、あの雪を抱いた山に迫り、さらにどんどん標高を上げていく。

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山間部の緑に囲まれた湖...を創造していたのだが、これは...

たどり着いたのは山頂近い湖。澄んだ水をたたえている。

しかし連日の寒さでこの標高。とんでもないことに...と思うかもしれないけれど、基本的に晴れ男な私の力が最大限発揮されたのか、この季節初めての初夏の天候。

なんとも気持ちいい。日差しが強烈なので、相当日には灼けそうだ。

まずはレイクでフライフィッシングの基本のお稽古。あとからリバーに入るらしい。

ニュージーランドのトラウトもフライフィッシングも、すべてイギリスからもたらされたものだ。

なので、こういった山頂近い湖にも放流されて、結果として自然に溶け込んだトラウトがたくさんいる。

はたして、生態系を考えた場合、これは正しいのか?

このニュージーランドという国は、もともとの生態系はほぼ破壊されて、外来の生物と外来の人間が、その作られた自然を謳歌している。

いいのか悪いのかも分からない。なんとも不思議な場所だ。

難しい問題だから、考えると楽しめなくなるので、とりあえず、与えられた目の前に確かに存在する自然を...フィッシングフィールドを楽しむことにしよう。

フライロッドを握るのは2回目。

随分前に、会社の先輩にバスのフィールドでバス用のフライを投げさせてもらったことがある。

ただし、フライフィッシングの基本は、もう小学生のころから勉強している。

そう、釣りキチ三平。魚紳さんがアメリカからの手紙で三平にレッスンするやつだ。

はたして何度読み返したことだろう。フライマン(風来満)にダブルホールに磨きをかけな!的なことを言われたり...

そういえば、あのレッスンをまねて、穂先に毛糸を結んで、意味もなくキャスティングの練習っぽいことしてたなぁ~

当然、ニュージーランドに行く前に読み返したのは言うまでもなくて、つまりは釣りキチ三平の対象魚別に編集されたものを全巻持っているのは言うまでもない。

僕らの世代は、まさに釣りキチ三平の現役世代。

少年マガジンで連載していたころに釣りまみれの少年時代を送っていた。

そろばん塾をさぼって近所の池で、なぜかその当時(すでに35年くらい前か?)からいたブルーギルを、こいつが何者かも知らずに釣り、鮒を釣り、鯉をかけてはぶち切られ...そして自転車こいで、荷台はクーラーを括り付けて、竿入れ担いでどこまでも、それこそ1時間でも自転車をこいで海に向かっていた。

なんだか、いい時代だったな。

そのまま大きくなって...というわけではなくて、高校、大学とほとんど釣りには行かなかった。もっと楽しいことがあったのかな?よく分からないけれど。

それから、何故だか大学5年生のころ、ふたたび竿を握る。握った竿は磯竿で、そして、あのいかつく、銀色に輝く、あの魚...チヌにであった。

それから20年。ひたすらチヌを釣りまくり、大切な仲間とであってさらにのめり込み、ホームページを立ち上げ、ちぬ倶楽部、釣りサンデーなどに寄稿を求められ、フカセジャパンというもうかなり前に消えてしまった雑誌には連載記事まで書いて...

そんなことをしているうちに、何か釣りに義務感を感じて、チヌを釣ることに高揚感を感じなくなって...そう、釣りにロマンを感じなくなると、それは辛い...釣りはまだ見ぬ魚との真剣勝負。ハンティング。ロマンなんだな。

仕事も忙しくて、今は亡き家庭も忙しくて、車も自由に使えず、だんだん釣りから離れてしまった。

そのなれの果てが今の僕。

だから、こんな壮大なフィールドを目の前にして、そして未知のタックルを手にして、ドキドキしない訳がない。だから、今は目の前のロマンを楽しもう。

まさか、釣りキチ三平で勉強してきた、とは言えないし伝わらないので、基本的な操作をフィルに教わる。

バックキャストからフォルスキャストへ。ループを維持しながら徐々にラインを送り出していく。

・・・が、頭の中で描いているイメージには何故だか現実は追いつかず、すぐにラインは勢いを失って、後ろの草むらを釣ってしまったり...実に難しい。

やはり、一日でそんな芸術的な、リバーランズスルーイット的な操作ができるわけもなく、つまりは一日中キャスティングには悩まされたわけだが...ただ、フィルには筋がいい、と褒められた。まぁあれだけ磯竿とはいえ振っているのだから、まったくの素人よりはマシでないとねぇ。

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日本の周防大島や、御荘や、その他あちこちで来ていた青いダイワのレイン。

そしてG杯の中国ブロック大会に出場したときかな?もらったがまかつの青いキャップ。

こうやって写真で見ると不思議だな...なんとなく。

さて、Jは...さすがにフライは無理だろう、ということで、事前にルアータックルの準備を頼んでいた。

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こんな虫っぽいルアー。

フィルは見ていない時にこれで一匹掛けたのだが、Jには魚は付き合ってくれなかったようだ。釣れないルアー釣りは、本当に釣れるのか?こんなもんで?という疑心に拍車をかけるので、結構つらいんだよね。で、ときどき寝てて、そのときにフィルが掛けたらしい。

「グッドファイトだった」と言っていた。まぁ30cmくらいのレインボーだったらしいが。

で、じゃあ、僕はどうだったか?

本当にフライは難しい。

懸命に振るのだが、うまくライズしている近くに落とせない。

焦るとラインは湖面をたたき、リーダーが切れる。フライをロストする。

たびたびラインを結んでもらうのも申し訳ないし、どのみちキャスティングのトレーニングだ、と考えて、リーダーが切れたところを勝手に結んで(ライン結びは当然慣れてるし)、結果、結び目がたくさんのリーダをフィルに差し出して、苦笑いされる...

また、風が吹くとまったく飛ばない。フィルは上手に飛ばすのだが...さすがだなぁ。

で、湖面に漂うラインをフィルをまねてロールキャストで伸ばそうとしても、できない。

う~む...

湖の脇の道路から、手近な駆け上がりに向けてキャストする。

背後の斜面のヒースに引っかかって大変だが、頑張る。

すると、ほんの15cmほどの魚が反応して、いったんフッキングした!と思ったら、湖面を魚が切った直後に外れてしまった。

その後、30cm弱の魚がフライにアタックしてくるのは2~3度見えたのだが、結局針には乗らず。

フィルの用意したサンドウィッチをJと頬張る。こういうところで食べると、こんな素朴なサンドウィッチが似合うし、なんとも美味しい。放り投げられたリンゴを受け取り、食べる。いいな...

さて、そのあと、

フィルがルアーでトラウトをかけた場所にまたウェーディングで立ちこんでロッドを振るが、風向きも悪くて思うところに飛ばない。

といったところでタイムアップ。

どちらかというと楽しみにしていたのは、この次。

いよいよリバーだ。

...to be continue...